2025年11月3日月曜日

ハワイアンのための映像メディア,オーイヴィTV 4/4

かつてオーイヴィTVのウェブサイトで公開されていた動画集は現在でも視聴することはできるので,過去動画を掘り起こせば,実にさまざまなハワイ先住民関連のイベントやハワイの出来事がカバーされており,どのような視点を先住民の視点として提示しようとしているのか体感することができるだろう.グローバルな言語として英語が祭り上げられている世界ではなかなか想像しにくいことかもしれないが,英語ではなく,ハワイ語でなければ見えてこない世界観があり,それを捉え,視聴者に届けるのがオーイヴィTVの理念なのである.ソーシャルメディアの発展に伴い,先住民グループもデジタル化を推進しており,その中でも最も充実しているのが教育ネットワークのカナエオカナ(Kanaeokanaのウェブサイトかもしれない.ハワイ先住民の言語文化に関する教材資料へのリンクがまとめられていて大変便利である.パンデミック時に次々に登場した複数のネット番組の動画も視聴できる.ハワイ語で行われるトーク番組もあるが,他は英語媒体だ.参考までに紹介しておくと,教育に関わっている方でハワイのことを取り上げるのであれば,非営利団体/出版社のアヴァイアウル(Awaiauluが立ち上げたキーパパ(Kīpapaというウェブサイトに登録すれば,ハワイの歴史文化を学ぶための動画やスライドを含む便利な教材にアクセスできるようになる.

2025年11月2日日曜日

ハワイアンのための映像メディア,オーイヴィTV 3/4

各ソーシャルメディアにおけるオーイヴィTVのフォロワー数は,Facebook8,8万), Instagram4.3万), YouTube2.7万), X0.6万), Vimeo0.1)となっている(2024年9月時点).最もフォロワー数が多いFacebookで主要な発信をして,Instagramで撮影風景や舞台裏などの写真や短い動画を投稿し,(オーイヴィTVの特徴であった従来のニュース番組とは異なるが)さまざまな文化イベントやシンポジウムなどの充実した記録動画集はYouTubeで公開するというような使い分けが行われているようだ.筆者が個人的に重宝するのは動画が充実しているYouTubeだが,ハワイ先住民コミュニティーの様子を写真を通して垣間見たいということであれば,Instagramが最適だろう.ところで,2024年初頭にYouTubeで公開されたインタビュー動画シリーズには,オーイヴィTV設立者の1人であるエイミー・カリリが今後の展開について視聴者にメッセージを発する映像が挿入されており,そこでは近々ケーブルTVチャンネル(Spectrum Channel 326)とウェブサイト(http://oiwi.tv)において新しい形式で放送を再開する旨を語っている.従来のようなハワイ語ニュースが再開されるのかもしれないが,発表から半年以上が経過した20248月の時点でウェブサイトは更新されておらず,ケーブルTVについては確認できていない.

2025年11月1日土曜日

ハワイアンのための映像メディア,オーイヴィTV 2/4

オーイヴィTVはハワイ語や先住民文化に関する映像コンテンツを制作し,配信することを目的とした非営利団体で,2000年代から2010年代にかけ,ウェブサイトで動画を公開したり,上記の英語メディアのテレビ番組内でハワイ語でニュースを配信するコーナーを展開したりしていた.これらの動画はハワイ語でナレーションをして画面上に英語字幕を表示したり,逆に,英語ナレーションにハワイ語字幕を表示したりというように,ハワイ語だけで放送することを目指しつつも,英語とのバイリンガル放送を基軸とするものだった.しかし,ソーシャルメディアの進展とともに,2010年代の後半から活動形態が変わり始め,ちょうどパンデミックもその変化を後押しすることとなったと考えられる.

2025年10月31日金曜日

ハワイアンのための映像メディア,オーイヴィTV 1/4

 (「映画で知るハワイ」をテーマに映画や動画についてのエッセイを書いています.初回の「ピクチャー・ブライド」はこちら.2つ目は戦争,3つ目は観光,4つ目はプリンセス,5つ目は先住民関連,6つ目はThe Wind and the Reckoning、7つ目はハワイ語は生きるというメッセージを発信するドキュメンタリー,8つ目はピジンという言語をテーマとする映画,9つ目は短編映画、10個目はハワイとつながりのある俳優、11個目はSNS動画,12個目は公共放送PBSハワイについて書きました。ここからはオーイヴィTVを紹介していきます。「映画で知るハワイ」シリーズはこれで最終回です.)

ハワイの映像メディアというと,ケーブルテレビで見ることができるいくつかのテレビ局が思い浮かぶ.オアフ島のホノルル市で見ることができる主要なテレビ局を挙げるとFOX, ABC, CBC, NBCといったネットワークに属するKHON, KITV, HawaiiNewsNowKGMB/KHNL)や公共放送ネットワークのPBSなどがあり,これらは全て英語メディアである.英語以外の言語をみてみると,日本語としては独立系のKIKU TVで日本の番組が放送されていたりするし,韓国朝鮮語のメディアもある.ここでは映像系エスニックメディアとして,ハワイ先住民の言語文化を扱うオーイヴィTVʻŌiwi TVを取り上げたい.(YouTubeチャンネルはこちら.)ちなみに,ハワイ語でイヴィは「骨」という意味で,オーイヴィで「子孫」という意味になる.ハワイアンが作る,ハワイアンのための映像メディアがオーイヴィTVだ.

2025年10月30日木曜日

PBSハワイ5/5

PBSハワイのウェブサイトには、ここで紹介したクラシクスやプレゼンツ以外にも映像集が公開されている。ウェブサイト左のリストから選択できる.ハワイアン音楽を聴きたいなら「ナー・メレ」(Nā Mele)が良いし、25年分の過去映像を視聴できる。「ホーム・イズ・ヒア」(Home is here)ではまさに今のハワイコミュニティーを取り上げているので、興味のある界隈にどのような店舗があるかなど知ることができる。「ヒキ・ノー」(HiKi Nōはメディア教育の一環として小中高生がPBSのサポートを受けて制作した映像で構成される番組で、ハワイの子供たちの様子を垣間見るのに適している。インサイツ(Insightsやカーコウ(Kākou)はハワイにおける社会問題について専門家が議論したり、一般の市民が対話したりする番組である。自分の好みや必要に応じて視聴されると良いだろう。これだけのリソースがあるのだから利用しないのはもったいないし,あなたの関心に近いものもあるはずだ.ぜひじっくりと視聴していただきたい. 

参考文献

 

PBSHawaiʻi. (2022, October 21). Ghosts of Old Honolulu with Lopaka Kapanui.

 

PBSHawaiʻi. (2023, November 16). Nation Within: The Story of America’s Annexationof Hawaiʻi.

 

PBSHawaiʻi Classics

 

2025年10月29日水曜日

PBSハワイ4/5

少し毛色の違う映像集を紹介すると,ハロウィーンのある10月をもじって「スプークトーバー」(Spooktober)という題名がつけられた動画集がある。ハワイの怪談集といったところだ。例えば,静まりかえった夜のホノルルのダウンタウンや学校の校舎を巡るツアーがあるかと思えば,戦後の混乱の中で寺院に遺骨が放置されたために子孫に呼びかけた霊の話,オアフ島の南東にあるサンディービーチ沿いの道路に現れた火山の女神ペレの物語などの超自然的な現象が紹介されている.ハワイ先住民の宗教観を基盤として,アジアからの移民たちが持ち込んだ宗教観や欧米の宗教観も混じり合ってできあがったのがハワイのゴースト・ストーリということになるようだ.現在でも「オバケ」は日系コミュニティーの生活語彙の一部であるし,神仏によって与えられるこらしめを意味する「バチ」も日系人が使用するのを耳にすることがある.日系人には仏教徒もキリスト教徒もいるが,「オバケ」や「バチ」は未だに共通して用いられているはずだ.

2025年10月28日火曜日

PBSハワイ3/5

PBSのウェブサイトには「PBSハワイ・プレゼンツ」(PBS Hawaiʻi Presents)という動画集もある.現代の作品や番組を集めた映像集という意味の題名だが,先ほど紹介したクラシクスに入っていてもおかしくない作品が混ざっている.その中でも1898年のアメリカによるハワイ併合を主題とする1998年のドキュメンタリー映画『国家内国家: アメリカによるハワイ併合』(Nation Within: The Story of America’s Annexation of Hawaiʻiの内容が重厚だ.アメリカ史も踏まえ,歴史上の人物の名前が多数登場するようなかなり詳しい内容になっているので,予備知識がないと途中で視聴を諦めてしまうかもしれない.それでも,ハワイに移民を送り出していた日本の明治政府がどのように関与していたかという点についても言及があり,ハワイ史を日本とアメリカとの関係も視野に入れて理解するのに役立つ映像である.同映像にはハワイ先住民研究で知られるジョナサン・オソリオやノエノエ・シルヴァが出演していて,カラーカウア王の権力を弱体化させた1887年の銃剣憲法のクーデター,1890年代の先住民による併合への抵抗運動とジョセフ・ナーヴァヒーの役割について解説している.彼らはこの数年後に同時代をテーマとする研究書を出版しているので(2002年にオソリオによるDismembering the Lāhui2004年にシルヴァによるAloha Betrayed),ある意味,研究成果を先出していたのかもしれない.その結果,歴史ドキュメンタリーの力作となっている.