ザ・ロック(The Rock)というリングネームで人気を博した元レスラーのドウェイン・ジョンソンは,プロレスリング一家に生まれ,サモア系の母親と黒人の父親を持つ.2015年から2016年にかけて最も高額な出演料(64.5億ドル)を手にしたハリウッド俳優となり,その後も活躍を続けている.『ジュマンジ』などの作品で知られ,声優としてはアニメーション映画『モアナ』でトリックスター的な神で、姿形を変えることのできるマウイを演じた. また,2024年にはポリネシア系アメリカンフットボール選手の殿堂入りを果たしている.社会貢献活動にも熱心で,ハワイで起きた災害やハワイ先住民の抗議活動への支援でメディアに登場することも多い.華々しいキャリアを持つが,14歳の時にハワイで強制退去を受けるなど苦労人として波乱万丈の側面があることが彼の魅力となっている.ドウェインはレスラー時代から自らのエスニシティーをサモア系であることを明示する名前(Rocky Maivia)から、The Rockへと変えてイメチェンを図っている。また、社会批評的なパロディー番組Saturday Night Liveでは(ハワイで生まれ,高校時代を過ごした)オバマ大統領(当時)が怒りで変身するThe Rock Obamaというパロディーキャラクターを演じていたことからも、彼が黒人を演じることは聴衆に受け入れられていると言えそうだし,功なり名を遂げた彼が未だに演じることを受け入れている.だからこそ、ハワイ諸島を統一したカメハメハに関する映画の企画が2018年に公にされた際、カメハメハ役としてドウェイン・ジョンソンの名前が挙がると、一部からは配役に関して不満の声が上がったようだ。その後の詳細は不明だが、2020年に撮影開始だったものの,2024年8月現在も当該映画は準備中ということになっている。ドウェイン・ジョンソンは現在の自分を形成したのはハワイでの体験だと語ることがあり、この役に強い思いを持っていると考えられる.映画制作が遅れているのは多忙のためか,それとも先住民コミュニティーからの反応を見極めているのだろうか。ひょっとしたら、このままお蔵入りになる可能性もあるのかもしれない。
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2025年10月18日土曜日
2025年10月17日金曜日
ハワイとつながりのある俳優たち5/7
ここまでは1990年代前後に活躍した俳優たちであるのに対し,より近年に注目されるようになった俳優たちとしてドウェイン・ジョンソン(Dwayne Johnson)とジェイソン・モモア(Jason Momoa)を挙げることができる.ハワイのローカルメディアがこぞって取り上げるのはこの2人である.ハワイ生まれのジェイソン・モモアは,ケーブルテレビ放送局HBOの『ゲーム・オブ・スローンズ』に出演し,映画『アクアマン』では主演を務めた.父親がハワイ先住民系ということで,自らのバックグラウンドを全面に出した適役といえるかもしれない.母親はアメリカ中西部アイオワ出身で,両親の結婚生活が破綻した後は,12歳になるまでアイオワで過ごし,その後,ハワイにいる親族との関係性を深めていったようだ.フルネームはジョセフ・ジェイソン・ナマカエハ・モモア(Joseph Jason Namakaeha Momoa)で,ミドルネームとファミリーネームがハワイ語だ.なお、『アクアマン』で共演しているハリウッド女優ニコール・キッドマン(Nicole Kidman)も両親はオーストラリア人だがハワイ生まれである。しかし、その後、シドニーで過ごし、ハワイに戻ってきてはいない。移動を続ける両親の元で生まれたという意味では他の俳優たちと共通点もあるが、キッドマンの場合はキャリアにハワイ色のアクセントをつけるという程度で言及されているに過ぎない。だからこそ、『アクアマン』に出演しているのかもしれないが。(ちなみに,ワイキキビーチに銅像があり,ハワイのアイコンであるデューク・カハナモクのドキュメンタリー映画『ウォーターマン』でナレーションを担当しているのはモモアだ.)
2025年10月16日木曜日
ハワイとつながりのある俳優たち4/7
名前からハワイとのつながりが示唆されるのはキアヌ・リーブス(Keanu Reeves)だ.ファーストネームはキアヌと表記されることが多いが,ハワイ語でケアヌと発音され,「涼しさ」や「寒さ」という意味になる.20年以上前の作品である『スピード』や『マトリックス』では主演として主人公のネロを演じたことをはじめ,数多くの作品に出演している.名前や父親がハワイ先住民系である他は,あまりハワイとのつながりが報じられることはない.しかし,中東レバノンのベイルート生まれで,その後,シドニー,ニューヨーク,トロントで育ち,3つの市民権(アメリカ,イギリス,カナダ)と3つのエスニシティ(ハワイ先住民系,中国系,欧米系)を持つという事実に象徴されるように,リーブスは映画界のハイブリッドなキャタクターを演じてきた稀有な俳優である.
2025年10月15日水曜日
ハワイとつながりのある俳優たち3/7
The wind and the reckoningで主演を務め、ハンセン病に罹患したハワイ先住民コオラウを演じたジェイソン・スコット・リー(Jason Scott Lee)は中国系とハワイ先住民系で,ロサンゼルス生まれだが、2歳からハワイで育った。1993年の映画『ドラゴン』ではブルース・リー、1994年には『ジャングルブック』でモーグリを演じ、他にもイヌイットや日系兵士など、さまざまなキャラクターを演じてきた。声優としては『リロ&スティッチ』でデイヴィッド(リロの姉ナニのボーイフレンドであるローカルボーイ)を演じ、2025年公開予定の実写版にも再び登場するようだ。2000年代のインタビューでは,ハワイ島のヴォルケーノ地区に電気も水洗トイレもない家で生活している様子が紹介され,ハリウッドから距離を置いてシンプルな生活を送る,まるで求道者のような様が印象的である.
2025年10月14日火曜日
ハワイとつながりのある俳優たち2/7
ハリウッド女優という敬称が似合うティア・カレレ(Tia Carrere)はホノルル出身で、『ウェインズ・ワールド』で歌手のカサンドラ、『トゥルー・ライズ』でスパイのジュノ・スキナーを演じた。アニメーション映画『リロ&スティッチ』ではリロの姉ナニの声優を務めた。その後、音楽活動でもその才能を発揮し、同じくハワイ出身で元クラスメートのミュージシャンであるダニエル・ホーと組んで、ハワイアンソング集を発表したことでも知られている。彼女のエスニシティはハワイ先住民系とフィリピン系ということで,2022年の映画『イースター・サンデイ』ではフィリピン系の女性ティタ・テレサ(テレサおばさん)を演じていることも注目すべきである.ちなみに,ティタはTitaで,英語のSisterが元になっていると考えられるが,ハワイのピジン英語でも,男性への呼びかけとして用いられるブラ(Bra)とともに,(強い)女性に対して用いられることがあるティタ(Tita)を彷彿とさせる.『イースター・サンデイ』に関するインタビューでは,中国人,日本人,ベトナム人,タイ人を演じたことはあるが,フィリピン系を演じるのは初めてだと述べている.(カレレにとって俳優と声優は別カテゴリーらしく、声優としてはハワイの先住民女性も演じたことには言及していない。)
2025年10月13日月曜日
ハワイとつながりのある俳優たち1/7
(「映画で知るハワイ」をテーマに映画や動画についてのエッセイを書いています.初回の「ピクチャー・ブライド」はこちら.2つ目は戦争,3つ目は観光,4つ目はプリンセス,5つ目は先住民関連,6つ目はThe Wind and the Reckoning、7つ目はハワイ語は生きるというメッセージを発信するドキュメンタリー,8つ目はピジンという言語をテーマとする映画,9つ目は短編映画について書きました.ここからはハワイとつながりのある俳優を紹介していきます。)
ハワイと何らかのつながりを持つ俳優たちについて取り上げてみたい。ハワイで生まれ育ったというだけではなく、ハワイ生まれだが別の場所で人生の大部分を過ごした人物もいれば、ハワイの外で生まれ、その後ハワイに移住したという人物もいる。ここではハワイをテーマとする映画から、ハワイとは関係のない映画まで言及しつつ、ハワイと接点のある俳優たちを紹介することでハワイについてアプローチしてみよう。こうした人物たちにフォーカスすることで、マルチレイシャルな俳優たちが直面する問題の一端が見えてくるだろう。
2025年10月12日日曜日
短編映画8/8
ハワイに関する5つの短編映画を紹介してきた.結局,ハワイについて知ると,日本やアメリカ,そしてその他についても知ることになる.ハワイを関心の軸として世界を知ろう.もちろん別にハワイ経由でなくても構わないのだけど,ここでは私が伝えたいハワイ関連作品をお勧めした。各短編で作者が見せたいもの,ハワイについて何を伝えようとしているのか考えながら見ると深く楽しめると思う.ここで紹介しきれない短編もあるし,HIFFのような映画祭でなければ見られない作品もあるので,興味のある人はぜひ現地で,あるいは,オンライン視聴のチケットを購入すると良いだろう.
参考文献
#HawaiianHistoryMonth The Massie Case
September 21, 2021
Kawena Komeiji
‘Hawaiian Soul’ film tells story of George Helm
AUG 8, 2022
Hawaiian Soul | Pacific Pulse | Season 5, Ep20
2024/07/26
Pacific Islanders in Communications
The Massie Case and Hawai'i: A Timeline
Timeline of Kahoʻolawe History