PBSのウェブサイトには「PBSハワイ・プレゼンツ」(PBS Hawaiʻi Presents)という動画集もある.現代の作品や番組を集めた映像集という意味の題名だが,先ほど紹介したクラシクスに入っていてもおかしくない作品が混ざっている.その中でも1898年のアメリカによるハワイ併合を主題とする1998年のドキュメンタリー映画『国家内国家: アメリカによるハワイ併合』(Nation Within: The Story of America’s Annexation of Hawaiʻi)の内容が重厚だ.アメリカ史も踏まえ,歴史上の人物の名前が多数登場するようなかなり詳しい内容になっているので,予備知識がないと途中で視聴を諦めてしまうかもしれない.それでも,ハワイに移民を送り出していた日本の明治政府がどのように関与していたかという点についても言及があり,ハワイ史を日本とアメリカとの関係も視野に入れて理解するのに役立つ映像である.同映像にはハワイ先住民研究で知られるジョナサン・オソリオやノエノエ・シルヴァが出演していて,カラーカウア王の権力を弱体化させた1887年の銃剣憲法のクーデター,1890年代の先住民による併合への抵抗運動とジョセフ・ナーヴァヒーの役割について解説している.彼らはこの数年後に同時代をテーマとする研究書を出版しているので(2002年にオソリオによるDismembering the Lāhui,2004年にシルヴァによるAloha Betrayed),ある意味,研究成果を先出していたのかもしれない.その結果,歴史ドキュメンタリーの力作となっている.