(「映画で知るハワイ」をテーマに映画や動画についてのエッセイを書いています.初回の「ピクチャー・ブライド」はこちら.2つ目は戦争,3つ目は観光,4つ目はプリンセス,5つ目は先住民関連,6つ目はThe Wind and the Reckoning、7つ目はハワイ語は生きるというメッセージを発信するドキュメンタリーについて書きました.ここからはピジンという言語をテーマとする映画を紹介しておきます。)
映画でハワイを知ることは,映画に登場するピジンについて知ることでもある.ピジンはハワイで話されている英語のような言葉と捉えられていることが多い.ピジンは先住民の言語であるハワイ語と植民者の言語である英語が接触して誕生し,その後,さらに中国語,ポルトガル語,日本語,イロカノ語などからも影響を受けた.そして,20世紀の初め頃には母語話者の登場により,ピジンからクレオールへ質的に異なる言語となったと考えられている.現在,ハワイの半数ほどの住人によって話される,あるいは理解されるといわれている.ハワイで生まれ育った者として拠り所を感じる言語でもある.一方,プランテーション労働者が用いる言語のようで言語とはいえないものというネガティブなイメージが現代にも引き継がれてきた.なお,ピジンはハワイにしか存在しない言語ではなく,植民地主義や貿易,奴隷制度など極限状態に置かれた人々により,カリブ海地域,中国沿岸,アフリカなどで主に欧米の言語と現地の言語が接触して誕生したピジン・クレオール諸語という言語グループとして知られている.(日本でも外国人居留地で横浜ピジンが話されていた.)故に,ハワイのピジンは言語学的にはクレオールだが,通称でピジンと呼ばれ,Pidginと大文字で表記し,その他の地域のピジンはpidginと小文字で表記して区別することもある.