ハワイの歴史と文化をテーマとする授業で、受講者たちにハワイのイメージを問うと、様々なキーワードが挙げられる中で,必ずと言っていいほど「海」や「ビーチ」が挙げられる。その後、1995年の映画『ピクチャー・ブライド』(Picture Bride)を視聴すると、ハワイのイメージが変わったという感想を述べる受講者たちが多い。20世紀初頭のハワイを舞台とするこの映画には海の映像はほとんど登場しない。海が映るのは、主人公リヨの友人カナが白い着物を身に纏った幽霊になって登場する真夜中の磯、そして、網の手入れをしている先住民の男性とリヨが短い会話を交わす昼間の砂浜だけだ。海の代わりに登場する映像は、内陸部の赤茶けた大地とさとうきび畑、そして、厳しい日差しから身を守るために全身を覆う農作業着姿の労働者たちと彼らが暮らす粗末な家屋だ。