『風と報復』はハワイのハンセン病史を知る上で良い教材である．俳優たちがハワイ語のセリフに挑戦したという意味でも，ハワイの映画史で重要な作品でもある．残念ながら，封切りから2年が経つ2024年になっても，日本語メディアの中では話題になっていないし，タイトルの邦訳も目にしない．日本のマーケットでハワイとハンセン病の物語が広く受容されるとは考えられていないのだろう。日本では手軽に視聴できないけれども，ぜひ観てもらいたい作品だ．日本やその他の国や地域におけるハンセン病をめぐる差別と偏見をテーマとする諸作品もあるので，比較することで，この問題についての理解を深めることができる．例えば、笹川財団は2023年にハンセン病をテーマにした映画祭をノルウェーの映画祭と共催するプレスリリースを発表していて，日本の「あん」を含め，国際的評価を受けた複数の作品に言及している．