2025年9月8日月曜日

「風と報復」The Wind and the Reckoning 4/7

ハンセン病は菌の感染によって起こる感染症である.かつての差別的な意味合いを払拭するため,菌を発見したノルウェーの医学者ハンセンに因んだ名称となっている.感染力は極めて弱く,遺伝することもないが,かつては不治の病とされた.西洋との接触後、外部からハワイにもたらされた様々な伝染病(水疱瘡,麻疹,おたふく風,コレラ,インフルエンザなど)と比べて,致死率が高かったわけでもないが,それ以上に忌避され,(先住民コミュニティーというより,欧米の価値観により)差別の対象となった.また,ハワイでは,アメリカ人の富裕層や外国からの移民労働者は感染したとしても隔離を免れ,ハワイの外に移動して治療を受けたり,本国に帰国することができたりしたのに対し,ハワイ先住民は基本的に隔離を回避することはできなかった.しかも,隔離されるのは他の民族集団よりも先住民が割合的に多く,その数は銃剣憲法のクーデターがあった1887年と王国転覆のクーデターがあった1893年に著しく増加したと指摘されている。ハワイの実権を握ろうとした少数の白人グループが強い影響力を及ぼしていたことが窺える.(なお,ハンセン病は日本でも長い歴史があるが,隔離政策が採られたのはハワイよりも数十年遅く、1931年の法律により,隔離の対象が全ての患者に拡大した.)ある意味,コロナ禍を経た私たちだからこそ、19世紀末のコオラウの時代の人々の気持ちに対する想像力を発揮し、自分ごととしてこの映画を深く理解することができるのではないだろうか.