プランテーションは階層社会である。階層の境界は民族集団の境界と重なり合っている。つまり、経営者は白人、現場監督はヨーロッパ人であっても白人のカテゴリーからは除外されているポルトガル系、労働者はアジア系だ。かつては先住民系も有期雇用で労働者として働いていたが、外部から持ち込まれた感染症により、先住民人口が激減し、経営者たちはアジア地域などから労働力を補充するという必要性に迫られた。だからこそ、映画には先住民系の登場人物はほとんど出てこない。リヨやマツジのような人々はやむにやまれぬ事情があって日本からハワイにやってきたわけだが、結果的には、構造的にプランテーション経営に組み込まれ、先住民が暮らす空間を収奪することに加担していたという側面があることを忘れるわけにはいかない。また,階層は使用言語でも示されている。労働者であるリヨとカナが洗濯のアルバイトで経営者の家を訪問する際は、経営者の妻と英語で会話をしている。別の場面ではリヨとカナは日本語やピジンで会話をしている。