2025年7月31日木曜日

戦争:真珠湾攻撃、日系人の強制収容、日系人部隊7/9

イノウエをはじめとする日系2世の若者たちは軍に入隊し,アメリカへの忠誠心を示そうとした.しかし,全ての日系人の若者がそのような選択をしたわけではないことを忘れるわけにはいかない.映画「ゴー・フォー・ブローク」の1951年版も,2017年版も描かなかった歴史の側面を,日系アメリカ人作家のジョン・オカダは1957年に『ノー・ノー・ボーイ』(No No Boy)という小説で描いている.小説の題目は,真珠湾攻撃後に,日系人を強制収容したアメリカ政府が行った2つの質問と関係している.質問は「軍隊に入ってアメリカのために戦うか否か,もう一つは日本ではなくアメリカに忠誠を誓うか否か」(山根 1997)というものである.オカダの小説の主人公イチローは,どちらの質問にも「ノー」と回答し,その後,収容所で2年間,さらに刑務所で2年間を過ごし,故郷のシアトルに戻ってくる.白人と同じように教育を受け,育ってきた自分,アメリカ国籍を持つ自分が強制収容されたことの意味をめぐって自分探しをする,というのが小説のあらすじだ.アメリカ社会におけるタブーを扱ったオカダの小説は,1957年に発表されてから,1970年代まで顧みられることはなかったが,現在ではアジア系アメリカ文学の古典とみなされている.