ここまで書くと、若い妻に受け入れられるというおじさんの欲望が投影された映画だと思われる視聴者がいるかもしれない.しかし、『ピクチャー・ブライド』は監督がカヨ・ハッタ,脚本がカヨと姉妹のマリ・ハッタによって制作され,女性たちの視点から日系移民を描いた作品として注目されたのである。農作業に慣れていない主人公のリヨを助ける友人カナとの関係性であるとか、偉そうなポルトガル系の現場監督アントンと渡り合う「ママさん」と呼ばれる頼もしい日系女性の存在、さらには農作業中にともに労働歌を謳って結束を強める女性たちの姿が描かれており、いわば女性たちの連帯がこの映画の主要なテーマになっている。主人公のリヨを演じたのは1990年代にハリウッド進出していた女優の工藤夕貴だ。1999年の『ヒマラヤ杉に降る雪』でも日系人女性を演じている。(工藤は『ラストサムライ』のケン・ワタナベや『ショーグン』のヒロユキ・サナダに先んじて国際派俳優としての立ち位置を築いていた時期があると言える。)『ピクチャー・ブライド』には工藤夕貴の他、黒沢映画で知られる三船敏郎も労働者たちを楽しませる巡業一座の弁士として登場する。