「PBSハワイ・クラシクス」では,各地の紹介映像があり、オアフ島ワイマーナロ,ウィンドワード・オアフと呼ばれる島東部,ハワイ島コハラ,ヒロ,プナ,モロカイ島などのライフスタイルが取り上げられている。また,往年のハワイアンミュージシャンやクムフラたちのパフォーマンス映像,初期のメリーモナーク・フェスティバルの映像などを視聴できる.ハワイでは年配者に対しクプナという敬称が使われるが,特にフラやハワイアン・ミュージックで知られるクプナの若かりし頃の映像だったり,現在のクプナの指導者にあたる一世代前のクプナが登場したりするので,少なくともここ50年あるいはそれ以上のハワイの歩みを概観できる贅沢な映像集だ.例えば1974年の映像には当時82歳のアリス・ナーマケルアが出演しているが,子どもの頃に(女王を退いていた)リリウオカラニの足をマッサージしたり,リクエストに応じて歌を歌ったりしたエピソードを語っていて,これらの会話がハワイ語で行われたことも明らかにしている.おそらく20世紀初頭のことだろう.他にも,モロカイ島の生活を描いた1993年の映像を見ると,王国転覆100周年にあたったこの年に人々がどのような思いを抱えていたかも伝わってくるし,伝統的な食文化の基盤となるタロパッチやフィッシュポンドの復元を通し,今でいうところの持続可能な生活スタイルについてすでに語られている.つまり,視聴者はこれらの映像を見ると,単にノスタルジックな記憶に浸って懐かしむというより,むしろ過去と現実がつながっていることを確認でき,未来に進むためのインスピレーションが湧いてくるのではないかと思う.