2025年10月8日水曜日

短編映画4/8

ノンフィクション2作目は「ハワイアン・ソウル」(Hawaiian Soulを紹介したい.これもPICYouTubeチャンネルで視聴できる.「ハワイアン・ソウル」は,ハワイ先住民の活動家であったジョージ・ヘルム(George Helm)という「ヒーロー」を描いた物語である.「ヒーロー」は悲劇的な運命と不可分だが,1977年,ジョージ・ヘルムはアメリカ海軍の演習地となっていたカホオラヴェ島で爆撃が行われていることに対する抗議運動として,泳いで島への上陸を試みる間に同志のキモ・ミッチェルと共に沖合で消息を絶った.その後、プロテクト・カホオラヴェ・オハナ(PKO)という団体の活動が身を結び,l990年にはブッシュ大統領(当時)の指示により,島への砲撃が停止され,アメリカ海軍からハワイ州へ島が譲渡されると共に,不発弾の処理が進められた.(1930年代という設定の「アラモアナ・ボーイズ」と同様,1970年代という設定の「ハワイアン・ソウル」でもアメリカ海軍の存在が物語にどのように関与しているかがわかってもらえると思う.)映画の中ではヘルムがティの葉で作ったレイ・ハクというか,ヘッドバンドというか,冠のようなものを頭に被っている.髪型も相まって,ヘルムの外見はいばらの冠を頭に被せられたイエス・キリストに見えなくもない.ヘルムはミュージシャンでもあった.映画の中では,観光地で演奏しているシーンもあるし,クプナたちに対し抗議活動への理解を求める際にはリリウオカラニが幽閉中に作曲した「クウ・プア・イ・パオアカラニ」を歌い,さらには映画の題名でもある「ハワイアン・ソウル」も歌うシーンがある.映画の題名となったこの曲は,実際はヘルムが亡くなった直後に,ジョン・オソリオとランディー・ボーデンが捧げた曲なので,この部分の演出はフィクションということになる.なお、映画の冒頭では,家族や友人たちが集まったパーティーで,幼いヘルムがある女性の歌い手の歌に魅了されて,楽器を手に取る様子が描かれているが,この歌い手はジョージ・ヘルムをおじに持つライアテア・ヘルムという現代ハワイを代表するミュージシャンによって演じられており,歌い手の系譜を描く印象的なシーンである.ちなみに,ヘルム役の俳優が歌うシーンは口パクのようだが,ライアテアは実際に歌っているので,そのあたりも見てほしい.