同様に,ピジンをテーマとする作品『私たちはなぜまだピジンを話すのか?』(Ha Kam Wi Tawk Pidgin Yet?)はワイアナエ高校の高校生によって制作された.YouTubeで視聴できる.タイトルがピジンになっていて,「ハ・カム・ウィ・トーク・ピジン・イェッ」という感じで,オド正書法という表記法で綴られている.英語の綴りを崩すと,標準的な言語から逸脱した「方言」や「ブロークンイングリッシュ」という印象につながりかねないので,ピジンに適した方法を用いることで英語とは別の独立した言語であることを主張する狙いがある.オアフ島西部にあるワイアナエ高校には,1993年からクリエイティブメディアについて学ぶいわば課外活動を行うグループ(Searider Productions)があり,全米的にも作品が評価されていた.2000年代にピジン・クレオール諸語の研究を行うハワイ大学のサトウ・センターとの共同プロジェクトで,ピジンをテーマとする映像制作を始めた.多くの生徒たちにとって身近ではありつつも,身近であるが故によくわからない点も多いピジンについて,書籍やインターネットで調べるというより,自らカメラを持って家族,友人,教員,コミュニティーの人々にインタビューし,さらに自らも語ることにより,ピジンに関する知識を生み出していった.当事者が知識の生産者になるという点がこの映画の最大の特徴である.