2025年9月23日火曜日

ハワイ語は生きる!というメッセージを発信するドキュメンタリー12/14

映像では触れられることがないが,カメハメハスクールは,ハワイ史における様々な対立や緊張感が立ち現れる場でもある.王国を建国したカメハメハの子孫パウアヒの遺言で19世紀末に創立され,先住民の子供たちの教育や社会的地位の向上を理念として掲げた学校だ.しかし,パウアヒの夫,チャールズ・ビショップは妻の遺言に基づいて同校の設立を実現させた一方,彼を含め彼の一族はハワイ王国を転覆し,臨時政府や共和国を設立し,アメリカ併合に向けて働きかけた白人グループの構成員でもある.また,学校はキリスト教的な価値観に基づいて運営されているため,かつては先住民言語文化を教えていなかった.後に方針の転換があり,現在では英語が教育言語ではあるが先住民言語文化の教育に極めて積極的だ.ハワイ語を教育言語とする公立校内のプログラムであるカイアプニ・ハヴァイイと補完的な関係にあるとはいえ,先住民系の家庭にとって,どのような教育方針をとるか一筋縄ではいかない問題もあることが想像される.最後に,上述の通り,先住民系であることが入学条件となっており,それには19世紀に社会的に抑圧されていた先住民を支援するという目的があるのだが,その歴史的経緯を知ることなく,あるいは無視し,同校の入学条件をアメリカという国家の枠組みの中で問題視する人々もいてこれまで何度も司法の場で争われてきた.