そして2016年に公開されたのがディズニーアニメーション『モアナと伝説の海』だ．（2024年の年末には続編の公開が予定されている．）原題は「モアナ」で主人公の名前でもあり，ハワイ語だけでなく，ポリネシア祖語という再構築された仮定の言語でも「海」を意味している．海によって分断されて散在する島々ではなく，海によってつながる島々という世界観が描かれている．主人公モアナはハワイに限定されない，海を中心とする世界の住人である．モアナは海と会話する特殊能力を持ち，もう1人のメインキャラクターである神と人の間のキャラクター，マウイと協力しながらも，一方的に助けてもらうような無力な存在ではなく，自ら勇敢に困難に立ち向かう．故郷のモトゥヌイという島の住人たちを想い，リーダー的役割を自覚している．モアナはマウイの少女パイラナと共通点が多い．「リロ＆スティッチ」でリロの声優はダヴェイ・チェイス（Daveign Chase）が担当しているが，リロの姉ナニをハワイ出身のハリウッド女優ティア・カレレが，ナニのボーイフレンドであるデイヴィッドを同じくハワイ出身のスコット・リーが担当すること以上にハワイで話題になることはなかった．一方，『モアナ』では，モアナの声優はハワイ出身のアウリィ・クラヴァーリョ（Auliʻi Cravalho），マウイは同じくハワイと繋がりがあるハリウッド俳優ドウェイン・ジョンソンが担当することが話題になったことからも，世界観の構築とともに声優の選定が注目されていたことがわかる．