2025年8月19日火曜日

プリンセスの系譜10/14

同年2002年に公開されたのが『鯨の島の少女』だ.原題は『ホエール・ライダー』(Whale Rider)で,出演者がすべてマオリ,監督もニュージランド人のニキ・カロということで話題になったニュージーランド映画だ.ケイシャ・キャッスル=ヒューズが主人公のパイケアを演じ,当時,史上最年少でアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされたことで話題になった.舞台は現代社会で,パイラナはニュージランド北島の東岸に暮らすマオリの少女だ.この地域の人々は鯨に乗ってやってきたという伝説を持つ.母親は双子をみごもっていたが,パイラナは無事に生まれてきた一方で,双子の兄弟と母親は亡くなってしまう.伝統的に指導的役割が期待される男の子を待ち望んでいた祖父コロとの関係は浮き沈みのあるものだが,周囲の人々はパイラナが持つ神秘的な力(鯨を呼び寄せることができた)や,リーダーとしての資質に気がつき始め,ついにコロも現実を認識することになる.この作品で描かれているのは,ホストとゲストといった関係ではなく,現代社会に生きる先住民,伝統の継承,ジェンダーといったテーマが軸として描かれており、同じ2002年に登場したキャラクターだが,リロとパイラナの描かれ方は対照的である.(ただし,映画『ホエール・ライダー』はマオリ作家ウィティ・イヒマエラ(Witi Ihimaera)による1987年の小説に基づいている.)