ご相談を受けた当初は、アルファベット表記だとHawaiiなのに、日本語では「ハワイ」というのはなぜ?という問いでした。つまり、アルファベットのiは2つあるのに、日本ではそのうち1つしか発音せず「イ」になっているような点が不思議ということでした。
結局、これってまだ研究がないと思うのです。私は現地で「ハヴァイッイ」「ハワイッイ」だったのが、どこかの時点で日本語に入ってきてハワイとなったのだろうと想像しました。
しかし、ハワイ王国と日本の接点はどこで始まったのでしょうか。1868年の元年者の移民がハワイに渡った頃でしょうか。それとも、1881年にカラーカウア王が日本にやってきた頃か、1885年に官約移民が始まった頃でしょうか。日本からの移民が現地の地名を耳にして、日本語に置き換えたのでしょうか。
ハワイ王国と明治政府の修好条約が締結されたのが1871年なので、この前に、王国側と日本側の代表者たちが交渉する中で、Hawaiiを日本語で表記し、条約文の中に盛り込んだはずです。
でも、条約締結に向けた交渉時、ハワイ側の代表者(外務大臣)は英語話者であるアメリカ人でした。英語話者であったということは、1830年代からすでにハワイ語新聞ではHawaiiと綴られていたこの地名をどのように発音していたのでしょうか。先住民のように「ハヴァイッイ」「ハワイッイ」と発音していたのではなく、おそらく「ハ.ワ.ィイ」や「ハ.ワィ.イ」のような発音でなかっただろうかと想像します。ハワイ側の代表者の発音を基に、日本側の役人は布哇や哇布と表記して条約文の中に盛り込みました。なお、その後、1880年代の日本の新聞では漢字ではなく、「ハワイ」とカタカナ表記もされていました。
ということで、19世紀の外交文書を丁寧に紐解いて、日本の新聞なども参照しながら、Hawaiiがハワイへと姿を変えたプロセスを解明したら面白いと思うのですが、このような話は番組には適さなかったようです。というより、実は正確なところはまだ誰も知らないということになるのかなと思います。