2025年10月11日土曜日

短編映画7/8

最後は「カパエマーフー」(Kapaemahuというフィクションを紹介したい。他作品は20分程度の長さだが、これは8分と短いアニメーション作品である.ワイキキビーチの傍らに置かれている大きな石の由来にまつわる物語で,そもそもなぜ石についての物語なのか,そして,現地に行ったことがあればわかるように,重要な石であるにもかかわらず表示は目立たず,いくつかの大きな石が本当にひっそりと置かれている.しかし,実は忘れられた物語があったということなのだ.その昔,(ハワイの外を意味する)カヒキからハワイにやってきた4人の人物がいて,それぞれが癒しの特殊能力を持ち,人々を助けたということがあった.4人がハワイを離れることとなり,オアフ島のカイムキーから切り出してきた石がワイキキに運ばれ設置された.その後,4人の存在も,石の由来も忘れ去られた現代社会へと時間が進められていく.パエは「上陸」,マーフーは女性でも男性でもなく両方の特徴を併せ持ったような「第3のジェンダー」と説明されている.性的マイノリティー(LGBTQ+)の枠組みの中で理解できるかもしれないし,ハワイの先住民社会において,単純なヘテロセクシャルな関係性に限定されない立場,多様な性があったことを念頭に映画を見てみると良いだろう.映画の題名は,そうした第3のジェンダーである人物たちがハワイにやってきた,という意味になっている.「カパエマーフー」と合わせて試聴してもらいたいのが,「ア・プレイス・イン・ザ・ミドル」(A place in the middleという動画である.PBSハワイのウェブサイトやYouTubeVimeoなどで試聴できる.こちらは現代ハワイで暮らす11歳のホオナニと周囲の人々を追ったドキュメンタリーだ.「カパエマーフー」の制作に中心的にかかわったヒナレイモアナ・ウォン・カル(Hinaleimoana Wong-Kalu)も登場する.ヒナはクム・ヒナと呼ばれることもあるように,教師であると共に,伝統文化の実践者や活動家,さらには作家としての側面も持つ多彩な人物だ.およそ10年前の作品なので,成人したホオナニがどのように成長したのかも気になる.男性フラ・グループをリードしたいというホオナニの本気の眼差し,ヒナとの絆,ホオナニが通う学校の校長先生が先住民系の子どもたちに向かって,自分の言語文化を公に学べなかった歴史を涙ながらに語るシーンなどをぜひ見てほしい.