先月の公聴会においてホノルル市議会議員のRod Tamが行った発言が物議を醸しています。具体的には「米国に不法入国するメキシコ人」に相当する蔑視語を使ったことが問題視され、差別的な発言として批判されています。Rod Tamは謝罪しましたが、ホノルル市議会は同議員に対し非難決議を採択しました。
スターブルティン紙(2008年6月8日)では2つのコラム(On PoliticsとGathering Place)がこの問題を取り上げています。アドバタイザーの記事(2008年6月5日)のほうが詳しく、実際の発言のビデオ映像も見ることができます。各記事からは読者によるコメントへのリンクもあります。
上記の記事を読んでいて、社会言語学者のJohn Gumperzの研究を思い出しました。GumperzはDiscourse Strategiesの第9章で、1960年代にベトナム反戦運動の集会で黒人の政治指導者が行った発言("we will kill Richard Nixon.")を分析しています。Gumperzは、"kill"の用法はアメリカ標準英語に基づいたものではなかった、と結論付けています。
ホノルル市議会議員Rod Tamの発言は「不用意」かつ「不適切」であり、ハワイ州のヒスパニック住民(約10万人、州人口の8%)の感情を傷つけました。「差別的かどうか」の判断基準のひとつは、いわゆる蔑視語の対象となっているコミュニティーの人々の反応だからです。しかし、Gumperzの研究は蔑視語さらには政治的公正の問題はもう少し慎重に議論されるべきだということを示唆しています。
例えば、差別語に関するRod Tamの「無知」を批判する人々がいます。また、彼自身も蔑視的な意味に自覚的でなかったと弁明しています。(断片的な)ビデオ映像を見た限りでは、Rod Tamは問題の語を使う前後の文脈でさまざまなContextualization cues(Word searching、ポーズ、笑い、"basically"などの語)を用いており、これらは蔑視語の意味に対する彼の理解を示しており、この語の使用が許容される(難しいですが)文脈を作りだしています。しかし、彼による言語使用上の試みはヒスパニックコミュニティーを中心とする人々には「無意味」と映り、単に「無知」や「差別的な動機」に基づいた「不適切な」行為として非難されています。これまでかなり問題のある政策提言などを行ってきたRod Tam(On Politics)ですが、少なくとも蔑視語に対して完全に無知ということはできなさそうです。